上機嫌でいこうw

松かさの生活と意見ほか

『日の名残り』、読んでから観た

カズオ・イシグロの『日の名残り』をKindleで読んでから、

YouTubeでレンタルして鑑賞した。どちらも静かな感動をもって

終えることができた。 

日の名残り ハヤカワepi文庫

日の名残り ハヤカワepi文庫

 

原作は、主人公の執事・スティーブンス(映画では、アンソニー

ホプキンス。以下、同様に記述)のひとりがたりという

形で進められる。主として、戦間期を振り返っての語りである。

スティーブンスの仕えるダーリントン卿は、ベルサイユ条約での

報復的なドイツへの賠償請求に反対、融和的な態度をとる。

そうした微妙な政治・外交の問題を話し合う「会議」が

ダーリントン・ホールで次々に開かれる。

来客に意見を求められることもあるが、頑なまでに

自己抑制的で、職務に忠実なスティーブンスは、「(その件に

ついては)お役に立てません」と、口を挟むことは謹んでいる。

そうした「会議」を支えるもう1人が、女中頭のミス・ケントン

エマ・トンプソン)である。2人は、少なからず互いを

意識している(ことが全編を通じることでわかる)が、

スティーブンスは職務を最優先するので、表面上は事務的な

対応に終始してしまう。

やがてミス・ケントンは結婚をすることになり、ダーリントン

ホールを去る。その結婚をスティーブンスに告げても、単に

「おめでとう」と言われるだけ。ケントンは、引き止めてもらい

たかったのかもしれない。

時は流れ、ダーリントン卿は世を去り、ホールはアメリカ人の

ルイス(クリストファー・リーブ)の手に渡る。

スティーブンスは、自分が年を重ね、かつてのように

職責を果たすには人員が不足していると判断し、折しも届いた

ミス・ケントン(結婚しているので、ミセス・ベンだが)からの

手紙を読んで、彼女を再度ホールに迎え入れようとする。

冒頭で、ルイス(原作ではファラディ)に、休暇を取ることを

勧められたスティーブンスは、ミス・ケントンに会って

彼女の意思を確かめようとする。

旅を経て、果たして再会した2人であるが、重ねた年月は

取り返すことはできないことに想いを巡らせる。

「落日の大英帝国」と、「人生の秋」とを重ねあわせたような、

陰影に富んだ作品となっている。ぜひお読みいただきたい。


日の名残り(字幕)  - 予告編